映画「旅立つ息子へ」を観た感想!障害児育児の親離れ・子離れ

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先日、自閉症スペクトラム(ASD)の息子と父の親離れ、子離れをテーマにした「旅立つ息子へ」という映画を観ました。

障害のある息子を育てている身として思うところがあったので、感想が薄れないうちにブログ記事にまとめます。

この記事を書いた人
  • 映画が好きで年間50本は観ます
  • 8歳娘・5歳息子を育児中
  • 5歳息子は急性脳症の後遺症で弱視+軽度知的障害
  • FP2級・Webライター歴8年
この記事でわかること
  • 旅立つ息子へのあらすじ・基本情報
  • 旅立つ息子へを見た感想
  • 旅立つ息子へを踏まえて育児で意識したいこと

旅立つ息子へのあらすじ

旅立つ息子への公式HPから引用したあらすじは下記の通りです。

愛する息子ウリのために人生を捧げてきた父アハロンは、田舎町で2人だけの世界を楽しんできた。しかし、別居中の妻タマラは自閉症スペクトラムを抱える息子の将来を心配し、全寮制の支援施設への入所を決める。定収入のないアハロンは養育不適合と判断され、裁判所の決定に従うしかなかった。入所の日、ウリは大好きな父との別れにパニックを起こしてしまう。アハロンは決意した。「息子は自分が守る―」こうして2人の無謀な逃避行が始まった。

旅立つ息子へ公式HP

良い意味であらすじを観て想像がつく通りの話であり、どんでん返しなどはありません。

MEMO

どんでん返しやあまりにもあり得ない展開でない分、登場人物の心情に寄り添うことができる映画です。

  • 脚本家の父と弟をモデルにしており実話に基づく物語
  • ASDの成年役を演じたノアム・インベルの演技が秀逸

上記の理由などでイスラエル・アカデミー賞を総ナメにした2020年の作品です。

ASDの役を演じたノアム・インベルの父は自閉症スペクトラム施設の職員をしており、ノアム・インベル自身も施設の子供たちと触れ合ってきた経験があるようです。

経験があるとはいえ、視線や身体の使い方、自分が希望していないコミュニケーションをされたときの演技はリアリティがあり本当に素晴らしいと感じました。

たじみゆ
たじみゆ

ドキュメンタリー番組を観ているかのような気持ちにさせられます

旅立つ息子へを見た感想(重大なネタバレなし)

育児中の人や育児が終わった人、発達に遅れのある子を育てている親御さんにぜひ観ていただきたいので、本記事では旅立つ息子へを観た感想をネタバレなしで紹介します!

  • 子離れではなく親離れの映画
  • 障害は本人にとってではなく社会にとっての障害である
  • 障害児が大人(障害者)になるということの難しさ
  • 親が子供の様子を見守ることの大切さ
  • 我慢すること=美徳ではない

子離れではなく親離れの映画

物語はASDの成年ウリが全寮制の支援施設への入所が決まったところから始まります。

MEMO

ウリは父親アハロンと生活をしており、入所に不安を感じ施設に向かう途中の駅でパニックに陥ります。

ウリがパニックになりアハロンが別居中の妻タマラに電話をし「ウリには時間が必要だ」と伝えるのです。

ただ、この段階で本当に時間が必要なのはウリではなくアハロンなんだろうな、と感じました。

というのも、ウリが施設に入所するための準備をアハロンはなにひとつしていません。

  • ウリへの説明や説得
  • 施設の見学
  • 育児に関する意見が異なるタマラとの話し合い

上記をせず、ただウリとの穏やかな日々を繰り返すのみ。

たじみゆ
たじみゆ

これではウリも入所に戸惑いパニックになるのも無理ありません

また、施設探しや見学、入所への手配を行っていたタマラが怒り狂うのも当たり前です。

障害は本人にとってではなく社会にとっての障害である

障害児や障害者は本人が障害を感じているのではなく、今の社会で生活する上で障害が発生するのみと感じました。

物語の冒頭でアハロンとウリが洗面台に並び2人で髭を剃るシーンがあります。

旅立つ息子へ

このときはポップな音楽が流れ、アハロンとウリは口ずさみ目を合わせて笑いながら髭を剃り本当に楽しそうです。

MEMO

アハロンとウリだけの世界であれば、障害なんて感じず世界はただキラキラと純粋に楽しいだけなんです。

この部分は私も普段から感じていて「息子が社会に出て辛い目に遭ったらどうしよう」「ずっと親子で狭い世界に閉じこもっていたい」と思ってしまいます。

  • アハロンとウリの2人だけのキラキラした世界(障害なんて感じない)
  • 逃避行中の2人が体験した広い世界(一般的な社会であり障害も感じる)

この対比が印象的であり、障害を持つ子を育てる身には刺さります。

障害児が大人(障害者)になるということの難しさ

ウリは年齢的には20歳であり、社会的には成人です。

ただ、ウリは知的障害も伴っているため、判断力や知能は身体と見合わず子供同然です。

  • 身体は大人だから髭が毎日生えてくる
  • 身体は大人だから異性の身体にも興味を持つ

障害児が大人になっていくというデリケートな問題についても、旅立つ息子へでは触れています。

たじみゆ
たじみゆ

少しですが、障害者の性の問題についても描かれています

アハロンにとってはいつまでも子供であるけど、社会から見ればウリは大人に見えるため障害をほほえましいエピソードとできない部分もあるのが当事者と近い立場で観ていると苦しいです。

親が子供の様子を見守ることの大切さ

映画の中では、逃避行中にウリが父親以外の人物と話すシーンを父アハロンが遠くから見つめるシーンが何度も描かれます。

  • アハロンの旧友とウリの会話
  • アハロンの弟とその奥さんとウリの会話
  • 同じホテルで滞在していた客とウリの会話

アハロンと話しているウリは純粋な子供といった様子です。

それに対し、アハロン以外と話すウリは意外としっかりしているし、周りもウリを受け入れている。

それをアハロンがなんとも言えない表情で見つめているのを画面越しに私たちが見つめ、親離れと子離れを意識させられます。

我慢すること=美徳ではない

ウリの母親でありアハロンの妻であるタマラは別居中であるため、ウリの世話をしているのはアハロンです。

そのため、アハロンは自分を犠牲にし我慢することを美徳、誇るべきことと捉えている部分があります。

具体的には、下記のシーンでそのような感想を持ちました。

  • アハロンの旧友との会話
  • 周囲の人物に頼ることを極端に嫌がる

アハロンの旧友は実母の介護をしており、先日看取ったばかりで落ち込んでいました。

その女性に「フィリピン人に介護を任せることなく、自分でやりきったことを尊敬している」などとアハロンは声を掛けます。

もちろん旧友を労い励ます意図もあるでしょうが、同時にウリを献身的に育ててきた自分に対して言っているようにも感じます。

たじみゆ
たじみゆ

物語が進むにつれ、アハロンが人に頼らずウリと孤独な道を進んでしまい胸が苦しくなってしまいした

旅立つ息子へを観た私が意識したいこと

旅立つ息子へを観てこれからの育児では、以下の3つを意識したいと思いました。

  • 親離れ・子離れ(親亡き後の生活)
  • 親子は違う人格でありそれぞれの人生がある
  • 子供の社会を作るサポートをしてあげたい

親離れ・子離れ(親亡き後の生活)

わかっていることですが、親が亡くなった後も障害のある子の生活は続きます。

たじみゆ
たじみゆ

医療の進歩で障害者の寿命も長くなってきていますしね

親が元気なうちに子離れして、子供なりの自立をさせることが大切だと強く感じました。

  • 仕事ができるなら仕事をさせる
  • 自分で生活できるようにする
  • 周りに頼ること、感謝の気持ちを持つことを教える
  • お金の管理について学ばせる

やることは山積みで子供が今困っていることに目を向けがちですが、親である自分は上記のことを意識して日々接したいです。

親亡き後対策としてすべきことは「障害者の親亡き後問題5つと解決方法について|元気なうちから対策しよう」でも紹介しています。

親子は違う人格でありそれぞれの人生がある

映画ではアハロンはウリのことを誰よりも理解してあげています。

  • ウリが好きなこと
  • ウリが心配していること
  • ウリが苦手なこと
  • ウリの癖や特性

上記を理解しているため、アハロンとウリは良くも悪くもニコイチのようになっています。

ただ親子がニコイチの存在になりすぎると、先ほど解説した親離れ、子離れも難しくなります。

  • 子供の気持ちに寄り添いつつ、一緒に崩れない
  • 親も育児ストレスの解消をする
  • 子供の問題を親だけで抱えすぎない

上記を意識して生活したいです。

子供の社会を作るサポートをしてあげたい

子離れとも共通しますが、子供にサポートするときは何から何までやってあげるのではなく、子供が自分の社会を作るサポートをしたいです。

MEMO

親と子は別人格であり、それぞれが持つ社会も違うはずです。

  • 自分
  • 家族
  • 職場
  • 支援をしてくれる人
  • 趣味
たじみゆ
たじみゆ

社会を取り巻く要素って上記の5つくらいじゃないかな、と思います

親が亡くなったときに上記の5つの環境がそれぞれ程よく毎日楽しく過ごせるようなサポートをしてあげたいです。

旅立つ息子への基本情報

旅立つ息子へをこれから観る人に向け、映画の基本情報を紹介します。

タイトル旅立つ息子へ
原題Hine Anachnu(英語:Here We Are)
製作国イスラエル・イタリア合作
製作年2020年
上映時間94分
キャストシャイ・アビビ
ノアム・インベル
監督ニル・ベルグマン
脚本ダナ・イディシス

旅立つ息子が見られるVODサービス

旅立つ息子へを動画配信している各種サブスクは下記の通りです。

サービス名配信状況
Hulu
2週間無料体験可能
Lemino
初月無料
DMMTVレンタル可能
prime videoレンタル可能
U-NEXT×
NETFLIX×
Apple tv×
たじみゆ
たじみゆ

私はWOWOWで観ました!

【まとめ】見た人がメッセージを感じる映画

旅立つ息子へはあらすじから予想できる展開通りですし、制作サイドが明確な泣き所や感動ポイントを用意しているわけではありません。

その分、観た人が自分でメッセージを感じる映画だと思います。

私も障害のある息子を育てていなかったら、映画を観てもあれこれ考えず「親子愛すばらしい!」くらいしか思わなかった可能性があります。

今回の記事を読んでストーリーが気になった人は、映画を観て自分なりの感想やメッセージを見つけてもらえると嬉しいです。

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