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障害のある子を育てているため、自分が老いたときや何かあったときが不安で仕方ありません……
未成年者や障害者が相続人になると遺産分割や相続手続きをスムーズに行えない可能性があります
もしものときのために、遺言書を作成しておくのが良いですよ
本記事では、上記のようにお悩みの人に向け、障害児育児中の人が遺言書を用意しておくべき理由を解説します。
父親や母親が亡くなると遺された配偶者や子供が相続人になりますが、未成年者や知的障害者などは意思能力がないとされるため、自分で相続手続きを行うことができません。
遺言書があれば相続人同士で遺産分割方法を話し合う必要がないので、相続手続きをスムーズに行えます。
遺された家族の負担を減らすためにも、元気なうち、若いうちから遺言書を用意しておきましょう!
本記事では、相続ライターである筆者が障害児育児中の親が遺言書を作成すべき理由を解説します。
障害者の親亡き後対策については、下記の記事で詳しく解説しているので、あわせてご参考ください。
- 8歳娘・5歳息子を育児中
- 息子は急性脳症の後遺症で弱視+軽度知的障害
- FP2級・Webライター歴8年
- 障害児育児中の親が遺言書を書くべき理由
- 障害児育児中の親が死亡したときの相続
- 遺言書を作成する際に理解しておくべきこと
【結論】障害児の親は今すぐ遺言書を書くべき
本記事の冒頭で解説したように、障害児を育てている親は年齢関係なく遺言書を作成しておくべきです。
遺言書を用意していないと、下記の恐れがあります。
- 相続手続きを進められず遺された家族の生活費の工面に苦労する
- 亡くなった人が遺した不動産を共有名義で相続しなければならない
- 障害のある子が財産を相続してしまい、成人後の財産管理に苦労してしまう
- 障害のある子が成人した後すぐに成年後見制度の利用が必要になってしまう
- 障害のある子が財産を相続してしまい、福祉サービスの利用ができなくなってしまう
父親や母親が亡くなった場合、何歳であっても子供は相続人となり財産を受け継ぐ権利を持ちます。
しかし、子供が未成年もしくは障害があり意思能力がない場合は、遺産分割方法を話し合うことや受け継いだ財産の管理もできません。
障害のある子が管理しきれない財産を相続してしまわないように、遺言書を書いておき自分に何かあったときの対策をしておきましょう。
次の章では、障害児育児中の親が亡くなったときの相続について詳しく解説します
障害児の親が死亡したときの相続はどうなる?
父親や母親が亡くなったときは、子供が何歳であっても障害があっても、相続人となり財産を受け継ぎます。
しかし、子供の年齢や障害の種類、程度によって下記の取り扱いとなるので注意が必要です。
- 子供が未成年の場合は遺産分割協議に参加できない
- 障害者に判断能力が認められないと遺産分割協議に参加できない
- 障害者に判断能力が認められても遺産の管理ができるとは限らない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
子供が未成年の場合は遺産分割協議に参加できない
父親や母親が亡くなったとき、子供の中に未成年者がいると遺産分割協議に参加できず、他の相続人も手続きを進められない恐れがあります。
遺産分割協議では、誰がどの財産をどれくらいの割合で相続するかを話し合います。
しかし、未成年者は判断能力がないとされ、遺産分割協議に参加できません。
遺産分割協議は相続人全員で行わないと無効になるため、相続人に未成年者が含まれると各相続人が受け継ぐ遺産の内容も決められません。
財産の名義変更手続きも進められませんし、相続税の申告も複雑になってしまいます……
相続人に未成年者が含まれる場合は、親権者もしくは特別代理人が代わりに遺産分割協議に参加する必要があります。
特別代理人が必要なケースについては、本記事の後半で詳しく解説します。
障害者に判断能力が認められないと遺産分割協議に参加できない
子供が成人していれば判断能力があるとされ、遺産分割協議に参加し相続手続きを進められます。
そのため、成人している障害者が相続人になると、成年後見人もしくは特別代理人がかわりに相続手続きを行わなければなりません。
障害者に判断能力が認められても遺産の管理ができるとは限らない
仮に障害の程度が軽く、相続人となった障害者に判断能力が認められた場合でも、受け継いだ遺産を適切に管理できるかは全くの別問題です。
例えば、発達障害者やグレーゾーン、境界知能の人は、下記のような金銭トラブルに巻き込まれやすいといわれています。
- 収入の範囲内でやりくりすることが難しく浪費しすぎてしまう
- 一時の感情を抑えられず、ギャンブルや浪費にのめりこんでしまう
- 友人、知人からお金を貸してほしいと言われ、安易に応じてしまう
- 詐欺の被害に巻き込まれてしまう
- 高額な商品、サービスをすすめられるがまま購入してしまう
上記のリスクがある以上、障害のある子に多額の遺産を遺してしまうと、かえってトラブルに巻き込まれ、子供の生活が脅かされる恐れもあります。
このような事態を防ぐためには、障害の程度が軽く判断能力が認められる子であっても、管理しやすい金額や種類の財産を遺す工夫が必要となるはずです。
遺言書を用意しておけば、指定した人物に希望の財産を遺せます
未成年者・障害者が相続人になると特別代理人が必要な場合がある
先ほど解説しましたが、未成年者や知的障害者が相続人になると特別代理人の選任が必要なケースがあります。
特別代理人とは、判断能力がなく自分で相続手続きを行えない人の代わりに相続手続きを行ってくれる人物です。
特別代理人とは何か、どんな相続で必要になるのか詳しく見ていきましょう。
特別代理人とは
特別代理人とは、相続が発生したときに未成年者や知的障害者、認知症の人の代わりに遺産分割協議への参加や遺産の名義変更手続きを行う人物です。
特別代理人が必要なケース
相続人に未成年者や知的障害者、認知症の人がいるケースでも、特別代理人が不要なケースもあります。
特別代理人が必要になるのは、親権者や成年後見人も相続人になるケースのみです。
未成年者や知的障害者は、通常であれば親権者や成年後見人が代理人になります。
しかし、相続の状況によっては親権者と未成年者の双方が相続人になることも珍しくありません。
例えば、父親(夫)が死亡したときは、未成年者の子供たちと母親(故人からみた配偶者)が相続人になります。
また、家族が知的障害者の成年後見人となっている場合も、特別代理人の選任が必要です。
特別代理人を選任する方法
特別代理人を選任する際には、家庭裁判所にて申立てをしなければなりません。
特別代理人を選任しなければ、残りの相続人も遺産分割できないので早めに手続きをしましょう!
特別代理人の申立て方法および必要書類は、下記の通りです。
申立てする人 | ・親権者 ・利害関係者(相続人など) |
申立先 | 未成年者や被後見人の住所地を管轄する家庭裁判所 |
申立費用 | ・収入印紙:800円分 ・連絡用の郵便切手代:数千円程度 |
必要書類 | ・特別代理人選任申立書 ・未成年者および知的障害者などの戸籍謄本 ・親権者(または未成年後見人)の戸籍謄本 ・特別代理人候補者の住民票もしくは戸籍附票 ・遺産分割協議書案 ・利害関係を示す資料 |
【注意】特別代理人選任時は原則として法定相続分で遺産を分け合う
特別代理人を選任する際には「遺産分割協議書案」を提出しなければなりません。
加えて、提出する遺産分割協議書案では、未成年者や知的障害者の法定相続分を確保している必要があります。
ここからは個人的な意見になりますが「障害のある子の資産を増やしたくない」が正当な理由として認められるかは微妙なところです。
希望通りの遺産分割ができない可能性や障害のある子やきょうだい児が困る可能性が1%でもあるならば、もしものときに備えて遺言書を作成しておくのが良いでしょう。
障害児の親が遺言書を作成するときのポイント
障害児育児中の親が遺言書を作成する際には、遺言書の種類や遺言執行者の選任などを考慮しておく必要があります。
具体的には、遺言書作成前に下記について理解しておきましょう。
- 遺言書には3種類ある
- 遺言執行者を選任しておく
- 遺留分を考慮しておく
- 障害児の子供が遺産を管理できない場合は家族信託も検討する
それぞれ詳しく解説していきます。
遺言書には3種類ある
相続対策で用いられる遺言書には、下記の3種類があります。
自筆証書遺言 | すべて自筆で作成する遺言書 |
公正証書遺言 | 公証人に作成してもらう遺言書 |
秘密証書遺言 | 記載内容を秘密にできる遺言書 |
なお、秘密証書遺言は実務でほとんど使用されていないので、実質的には自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類です。
信頼性が高く遺言書の紛失や改ざんリスクがないのは、公正証書遺言です。
ただし、公正証書遺言が証人2名が必要、作成に費用と手間がかかるなどのデメリットがあります。
そのため、比較的年齢が若い夫婦が遺言書を作成する場合は、まずは自筆証書遺言を作成するだけでも良いでしょう。
自筆証書遺言であれば、紙とペンさせあれば作成可能です
遺言執行者を選任しておく
障害児育児中の親が遺言書を用意する際には、遺言執行者も選任しておきましょう。
遺言執行者がいない場合、遺言書に書かれた相続人や受遺者が協力して相続手続きを進めなければなりません。
相続発生時の子供の成長や障害の程度が予測できない以上、遺言執行者を選任しておき、単独で相続手続きを進められるようにしておいた方が良いはずです。
遺言執行者は司法書士や弁護士に依頼することもできますが、相続人の1人を指定しても問題ありません。
信頼できる親族や定型発達の子供を遺言執行者に指定しておけば良いでしょう
遺留分を考慮しておく
遺言書作成時には、遺留分についても理解しておきましょう。
遺留分は遺言に書かれた内容より優先されるため「配偶者にすべての財産を相続させる」と遺言書に記載しておくと、子供が成人したときに遺留分侵害額相当の金銭を配偶者に請求する恐れがあります。
具体的には、下記の工夫をしておきましょう。
- 偏った内容の遺言書を作成するときには、自分の遺志や作成時の意図も添えておく
- 子供にも遺留分相当額の遺産を相続させておく
遺言書に自分の遺志を書いていた場合、法的拘束力はないものの読んだ子供が「このような気持ちで遺言書を書いていたのか」「亡くなった親の遺志を尊重しよう」と考えてくれる可能性はあります。
障害児の子供が管理できない場合は家族信託も検討する
遺言書を作成し相続対策をしたとしても、親亡き後に障害のある子が遺産を管理できるかどうかの問題は解決できていません。
家族信託とは、家族に財産の運用や管理、処分を任せる制度です。
家族信託では財産の利益(受益権)を受け取る人物も指定できるので、下記のように信託契約を結べば、定期的に障害のある子に財産を移せます。
- 委託者(財産の所有者):父親・母親
- 受託者(財産の管理や運用、処分する人):定型発達の子供
- 受益者(財産によって発生した利益を受け取る人):障害のある子
家族信託は障害者の親亡き後対策としても有効ですが、自分たちに合う信託契約を作成するのが難しい点がデメリットです。
親亡き後対策や相続対策として使うなら、専門家に相談することをおすすめします
障害児育児中の親の遺言書についてよくある質問
最後に、障害児育児中の母親・父親が遺言書を用意するときによくある質問を紹介します。
- 障害児・障害者は相続放棄できますか?
- 障害者が知的障害などで判断能力がないとされる場合や未成年者の場合、自分で相続放棄することはできません。
成年後見人や特別代理人を選任して相続放棄をする必要があります。
- 障害のある子供も相続人になる?
- 父親や母親が亡くなった場合、障害のある子供も相続人になります。
知的障害で判断能力がないとされる場合や子供が未成年者の場合、意思決定能力がないため成年後見人や特別代理人の選任をしなければなりません。
- 知的障害者は遺産分割協議に参加できる?
- 知的障害で判断能力がないとされると、遺産分割協議には参加できません。
遺産分割協議は相続人全員で参加する必要があるため、成年後見人の選任が必要です。
【まとめ】まずは配偶者に財産を遺す遺言書を作成しておこう
障害児育児中の親は若いときから、自分に何かあったときのために遺言書を書いておくのが良いでしょう。
未成年者や知的障害者が相続人になったとき、遺言書がないと特別代理人の選任が必要になる場合があるからです。
そして、特別代理人を選任した場合、未成年者や知的障害者に法定相続分の財産を原則として遺す必要があります。
子供に障害があり遺産の管理を行うのが現実的ではない、グループホーム入居を考えているので障害者自身の資産を増やしたくない場合は、遺言書を作成しておくと確実です。
また、遺言書を作成したときには遺言執行者も指定しておくと、遺言執行者が単独で相続手続きを進められます。
配偶者や定型発達の子供、信頼できる親族を遺言執行者として指定しておくだけでもOKです!
夫婦の結婚記念日、将来に向けて考えることの多い年末年始など節目のタイミングで、夫婦それぞれ遺言書を作成してみてはいかがでしょうか。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました