お悩み知的障害のある子の勉強、どこまでできるようになればいいんだろう?



全部覚えるまで繰り返すべき?わが子に合う目標が分からない……。
知的障害のある子の学習目標は、定型発達の子と同じ到達点を目指すことだけではありません。
今の暮らしや本人の「やりたい」を手がかりに、学ぶ内容や使う支援を考えられます。目標を決めにくいときは、学校の先生や、関わっているSTなどの支援者と一緒に考えていきましょう。
私も息子のひらがな学習で、全ての文字の読み書きを目指していました。
この記事では、STさんの助言で目標の捉え方が変わった体験と、わが子に合う学習目標の考え方、相談先を紹介します。
知的障害のある子の勉強はどこまで?学習目標は子どもに合わせて考える
知的障害のある子の勉強をどこまで進めるかに、一律の到達点はありません。
子どもの今の力や関心、学んだことを使う場面を踏まえて、目標を考えていきます。
同じ学習内容をゆっくり進める以外の目標もある
子どもに合わせて考えられるのは、学ぶ速さだけではありません。
取り組む内容や、どこまでできることを目指すか、どんな手助けを使うかも調整できます。
定型発達の子と同じ内容をゆっくり学ぶことが合う場合もあれば、今の生活に必要な内容を優先したり、読むことと書くことの目標を分けたりする場合もあります。



学年や障害名だけでゴールを決めず、何ができて、どこに難しさがあるのかを見ながら、学校や支援者と具体的に考えていきましょう。
「全部できる」だけでなく「生活で使える」も目標になる
例えば、ひらがなであれば、全ての文字を読み書きできることはひとつの目標です。
そのほかに、身近な言葉を読んで選ぶことや、文字や道具を使って伝えることも目標として考えられます。
その際は、身につけたい学習内容と、使えるようになりたい場面を結びつけることが大切です。
「生活で使う」という大きな目的から、今どの言葉を学ぶか、どんな支援を使うかを具体化していきます。



今の学習について、「できるようになったら、どんな場面で使いたいか」をひとつ考えてみてください。
それが、わが子に合う目標を話し合う手がかりになります。
ひらがなの完全習得を目指していた私が、STさんの助言で気づいたこと
わが家で学習目標を考え直すきっかけになったのは、息子のひらがな学習について、ST(言語聴覚士)さんから受けた助言でした。
小学2年生の息子はひらがなを一文字ずつ読む練習中
知的障害と弱視のある小学2年生の息子は、ひらがなを一文字ずつ読む練習をしています。
読めるか確認すると正解するのは全体の3分の2ほどであり、読める文字でも書くことは難しい場合があります。
一度教えればすぐに覚えられるわけではなく、何度も繰り返し、数か月かけてようやく身についたと感じることもあります。
私はこうした練習を続けながら、全てのひらがなを読み書きできるようになることを目指していました。
まだ読めない文字があると、そこを覚えることが次の課題だと考えていたのです。
読み書きの完成から暮らしで使うことへ
ところが、STさんからは息子の目標について全てのひらがなを完全に覚えることだけでなく、日常で使えることを考えていこうという助言を受けました。
そのための方法として、以下のような練習・対応も提案されました。
- 50音表を頼りにする練習
- 音声入力・読み上げなどの機能を使うこと
- 今から機器に慣れていくこと



私はWebライターとして普段からパソコンを使っているので、機器の力を借りること自体には抵抗がありません。
それでも、息子の学習に結びつけて考えたことはなく、目標の置き方が変わることに驚きました。
文字を全て覚えてから使うのを待つだけでなく、今の力と道具を組み合わせて、使う経験を重ねていく――その視点が、私には抜けていたのだと思います。
目標を変えてよいと知った安心と少しの悲しさ
助言を聞いて、全てを自力でできるようになることだけを目指さなくてもよいのだと、気持ちが少し楽になりました。
一方で、少しの悲しさもありました。
同じ内容をゆっくり学んでいけば、いつか読み書きが完成する――そんなふうに思い描いていた目標を、捉え直すことになったからです。



考え方に納得できても、気持ちがすぐに追いつくわけではありません。
また、生活で使うことを目標にするとしても、教材をどこまで進めるのか、何を優先するのかは、今も決めにくいと感じています。
今回の助言は、息子の様子を見ているSTさんから、息子に向けて受けたものです。
わが家ではこれをきっかけに、「どの文字が読めないか」に加えて、「文字や道具を使って何ができるようになってほしいか」も、相談したいこととして考えるようになりました。
わが子に合う学習目標を考える3つの手がかり
目標を考え直そうと思っても、将来どこまで読み書きや計算が必要になるかを、今から見通すのは難しいものです。
まずは今の暮らしで使いたい場面から、当面の目標案を考えてみましょう。
今の暮らしと本人の「やりたい」から使う場面を考える
手がかりになるのは、本人が興味を示すことや普段の生活で選んだり伝えたりする場面です。
例えば、息子はAlexaに話しかけて返事をしてもらえたとき喜んでいました。



その姿から、音声で機器を使うことも、息子の「やりたい」につながりそうだと感じています。
今後は、親子で音声入力を試したり、「ごはん」など身近な言葉をまとまりで学んだりしたいと考えています。
まだ取り組み案の段階ですが、文字を覚えることとと使いたい場面を結びつけるきっかけになりそうです。
学習目標を考える際も、「好きなものを選びたい」「知りたいことを調べたい」など、本人の関心や日常の行動を一つ挙げるところから始められます。
一人でできることと支援や道具があればできることを分ける
次に、その場面で今どこまでできるかを見てみます。
1人でできることに加えて、声かけや写真・道具があればできることも整理すると、練習したい部分が具体的になります。
例えば、音声入力を使いこなせるかは、以下のように分けて考えられます。
- 話すこと
- 入力を始める操作
- 結果を確かめること



親が操作すれば話せるなら、まずは一緒に使うことを目標案にできます。
文字や写真を使う場合は、本人に見やすい大きさや配置かも確かめましょう。
弱視などがある場合は、課題の内容が難しいのか、見えにくくて取り組みにくいのかも、先生や支援者と確認したい点です。
次の表は、目標を具体化するための仮の例です。
| 使いたい場面 | 当面の目標案 |
|---|---|
| 食べたいものを選ぶ | 写真と文字を添えた選択肢から、食べたいものを指さして伝える |
| 音声で調べる | 保護者が入力を始め、本人が知りたいことを話す |
食べ物を選ぶ例なら、写真で選べたこととと文字を読めたことは分けて見ます。



何を学ぶ目標なのかを、支援者と確認しておくとよいでしょう。
当面の目標を1つ決め取り組んだ様子から見直す
目標案ができたら、学校や支援者と相談し、まず取り組むことをひとつ決めましょう。
取り組んだ後は、正解・不正解だけでなく、以下のような内容を短く残しておくと、見直しの材料になります。
- どんな手助けでできたか
- どこで止まったか
- 本人がまたやりたがったか
難しい状態が続くときは、課題を小さくしたり、提示の仕方を変えたり、別の方法を試したりするなどを相談できます。



できるようになったら、手助けを減らすか、別の場面でも使ってみるかを考えます。
教材を全部終えたかだけで区切らず、決めた目標に対して何ができたかを見た上で、今の練習を続けるのか、生活で使う練習を加えるのかを考えていきましょう。
参考:指導目標、指導内容、指導方法は、個別の指導計画にどの程度、具体的に示せばいいんだろう?また、どうやって、それらを決定すればいいんだろう?|文部科学省


親だけで学習目標を決めにくいときは、誰に相談すればよい?
目標の案を考えても、「今の子どもに合っているのか」「どこまで進めればよいのか」は、親だけでは判断しにくいものです。
そんなときは、子どもの学習や生活を見ている先生・支援者と一緒に考えていくと良いでしょう。
学校の先生に今の目標と家庭での取り組みを相談する
学校での学習については、まず担任の先生に相談できます。
個別指導計画がある場合は、それを見ながら今どんな目標で、何に取り組んでいるのかを確認すると話しやすくなります。
例えば、ひらがななら「学校では読むことと書くことを、それぞれどこまで目指していますか」「家庭では何を優先するとよいですか」と聞いてみるのも手です。
家庭で使っている教材があれば、迷っているページを見せるのもひとつの方法です。



学校での様子と照らし合わせながら、続ける課題や、別の練習を加えるかを相談できます。
担任だけでは整理しにくい場合は、校内の特別支援教育コーディネーターにも相談できます。
利用している支援先がなく、相談相手に迷う場合は、自治体の教育委員会や教育センターに、学習について相談できる窓口を確認してみましょう。
STなど子どもを継続して見ている支援者にも相談する
言葉の理解や、伝える手段について迷う場合は、関わっているSTさんも相談相手になります。



わが家では、信頼関係のあるSTさんが、息子の様子を踏まえて学習の方向性を提案してくれています。
一方で、教材のどこまでを到達点にするかは私自身、今も決めにくいと感じています。
こうした迷いは、STさんの助言を学校にも伝えながら、学習目標と結びつけて相談していくとよさそうです。
短い診察では、目前の困りごとの相談が中心になり、学習目標まで話すのは難しそうだという実感もあります。
相談したい内容があるときは、事前に伝え、話す時間を取れるか確認しておくとよさそうです。
見えにくさや書く動作などが気になる場合も、関わっている医療・療育の担当者に具体的な様子を伝え、誰に相談するとよいかを聞けます。
学習内容は学校、言葉や伝える手段はSTなど、相談したいことに応じて意見を聞き、必要な情報を共有していきましょう。
相談するときは教材と「決めたいこと」を具体的に伝える
相談前に立派な記録や目標を用意する必要はなく、次の3点を短く整理しておくと話の入口になります。
- 今できること・難しいこと
- 生活でできるようになってほしいこと、本人がやりたいこと
- 今回決めたいこと
例えば、「読めない文字が残っています。今の教材を続けながら、50音表を使う練習も始めてよいでしょうか」と伝える形です。



できたときの手助けや、難しかった課題も添えると、検討しやすくなります。
相談の最後には、以下の内容も確認しておきましょう。
- 家庭でまず何をするか
- どんな様子を見ておくか
- 次にいつ確認するか
目標をうまく言葉にできないときも、「何を目指せばよいか、一緒に考えてほしい」と伝えるところから始められます。


知的障害のある子の勉強・学習目標についてのFAQ
最後に、知的障害のある子の勉強や学習目標について、よくある質問を回答と共に紹介していきます。
- 知的障害のある子に勉強は意味がありますか?
-
勉強の意味は、学年相当の内容を習得したり、テストで正解したりすることだけではありません。
身近な言葉を理解したり、好きなものについて知ったりするなど、本人の生活や楽しみにつながる学びもあります。
成果が見えにくいときは、何のために取り組んでいるか、内容や方法が今の子どもに合っているかを先生や支援者と振り返ってみましょう。
- 50音表や音声入力を使うのは読み書きを諦めることですか?
-
道具を使うことと読み書きの練習を続けることは、両立できます。
わが家でも、STさんからの助言をきっかけに、覚える練習に加えて、道具を頼りに使う練習も考えるようになりました。
どの場面で何を使うか、どんな練習を続けるかは、本人の力や使いやすさを見ながら相談していきましょう。
- 将来必要な学習範囲が分からなくても目標を立てられますか?
-
将来の到達点を全て決めなくても、今の暮らしや本人の関心から、当面の目標を考えられます。
例えば、好きな食べ物を選んだり、身近な言葉を読んだりなど、使いたい場面を一つ挙げてみましょう。
目標にするのが難しければ、その場面と今の様子を先生や支援者に伝え、一緒に具体化するところから始められます。
まとめ|わが子が何に使うかを手がかりに、学習目標を考えよう
知的障害のある子の学習目標は、定型発達の子と同じ内容をゆっくり習得することだけではありません。
本人の力や関心、生活で使う場面に合わせて、学ぶ内容や到達点、支援を考えられます。
目標に迷ったら、まずは「好きなものを選ぶ」など、できるようになってほしい身近な場面をひとつ挙げてみましょう。



1人でできることと、手助けがあればできることを整理すると、相談の手がかりになります。
親だけで決めにくいときは、教材や家庭での様子を学校の先生・支援者に伝え、一緒に考えてもらえます。
将来のゴールを今全て決めようとせず、当面の目標から取り組み、様子を見ながら見直していきましょう。










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